ロサンゼルス・ダイバーシティ・フィルムフェスティバルに日本映画として初のノミネートされたドキュメンタリー映画『You Decide.(邦題:息子のままで、女子になる)』。2020年8月4日(火)〜30日(日)のオンライン上映を期して、新世代のトランスジェンダー女性として今注目されている主演の畑島楓(サリー楓)さん、そしてエグゼクティブプロデューサーを務めるスティーブン・ヘインズさんにインタビューしました。
|ミスコンへの出場で外見美ではない“自分らしさ”が見つかった
撮影当時は慶應大学大学院生で、卒業後の現在は「子供の頃からの夢だった」という“建築家”として大手建築会社に勤務する楓さん。そんな彼女の生活や家族との関係が赤裸々に描かれている本作はドキュメンタリーということもあり、彼女の姿はあくまでも自然体ですが、そこには制作側の狙いも。実は撮影については楓さんに一切予告せず、突然始まったと言います。
「映画を撮るってことは聞いていたんですけど、いつ撮るとか段取りとかも知らないまま最初のレッスンに行ったら、カメラマンが待ち構えていたという感じです。でも、いきなりで考える時間もなかったので、かえってリアルな自分を表現できました」
▲「ミスコンはダンスやメイクも頑張ったけど、それだけじゃ勝てない世界。その過程で自分の本当のやりがいが何か明確になりました」と楓さん。
映画の中では、同じく本作に出演するはるな愛さんが優勝したトランスジェンダー女性のミスコン「ミス・インターナショナル・クイーン」に挑戦する姿も映し出されている。
「ミスコンについては、はるなさんや西原さつきさん(同作にも出演)らトランスジェンダーの有名な先輩方が出たから出ようという感じでした。でも、他の出場者たちと自分を相対的に見た時、大学院に通って、社会人になるというバックグランドはレアで、この経験はポジティブになるんじゃないかと思いました。私は講演活動も行なっていて就活イベントに登壇することが多いんですけど、そこでトランスジェンダーの学生や親御さんによく“普通に学校を卒業すること、社会に出る姿が見えない”と相談されるんです。だから、私がトランスジェンダーでも学校にも行けるし、普通に就職できるっていう、みんなのロールモデルになりたいと強く感じました」
そんな彼女の変化と成長を近くで見ていたプロデューサーのスティーブンさんは「初めて会った時、彼女は本当にフレッシュでイノセントだったけど今はすっかり成長した。それは杉岡太樹監督に会ったことも大きいと思う。彼女は花束のようにいろいろな考え方を持っていたけれど、監督は芯を持って一本の考え方に集中するタイプ。そういった彼の考え方に触れて、彼女も自分のやりたいことに集中したのだと思う。だから今、本当に花開いていると思うよ」と太鼓判を押します。
|本当の美しさには笑顔と共に“ボーダレスな自分らしさ”が必要
スティーブンさんは、はるな愛さんを世界一に導いたカリスマウォーキングトレーナー。楓さんもコンテスト前、彼の指導を受けたことで表情や考え方に変化があったそうで、「トレーニングではいつも“笑顔になって”とスティーブンに言われました。疲れた時や緊張する時とかって本当の笑顔が出せないし、引きつっちゃう。でも、笑顔をずっと続けていると段々と心まで笑顔になっていくんです。それに、笑顔にも慣れてきて自分を取り戻せるようになりました」と笑顔で語ります。
▲「どんな時も笑顔を忘れないで」と素敵な笑顔を魅せるカリスマウォーキングトレーナーのスティーブンさん
その楓さんの言葉にスティーブンさんも「心が笑えば自分自身だけでなく、考え方や環境などすべてが幸せだと感じられるもの。辛い時にただおちゃらけて笑って逃げるのではなく、笑顔になって切り抜けることが大事。そうすると自信が出てきて内面の美しさで輝けるようになる。楓のようにね」とアドバイス。
▲「自分は美しいと思う?」というスティーブンさんの質問に「You Decide(あなたが決めて)」と答えた楓さん。「そんなことを言った人は初めてですごく心に焼き付いたから、映画のタイトルにもなってるんだ」とスティーブンさん
今も進化を続ける楓さんがめざすのは「男性らしさ、女性らしさというよりも先に“自分らしさ”があること。性別、国籍、経歴といったカテゴリーを超えた“ボーダレスな美しさ”」とのこと。まさにその言葉通り、ボーダレスに自分らしく輝く楓さんのリアルな姿を、ぜひ彼女の現在進行形となるドキュメンタリーでチェックしてみてくださいね。<photo:本城直季 text:ピーリング麻里子>
『You Decide.(邦題:息子のままで、女子になる)』
制作・監督・撮影・編集:杉岡太樹 / エグゼクティブプロデューサー: スティーブン・ヘインズ /出演:畑島楓(サリー楓)、スティーブン・ヘインズ、西村宏堂ほか ※ロサンゼルス・ダイバーシティ・フィルムフェスティバルの公式HPにて2020年8月30日(日)まで視聴可能<1作品$7.99で鑑賞できます(全ての作品を鑑賞する場合は$29.99)>
2020/08/04| TAGS: LGBT
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