ー久保さんはいわゆる理系の研究者ですが、今回アートの展覧会に協力されているのはなぜでしょうか?
美術館には「走らない」、 「さわらない」 、「さわがない」という暗黙のルールがありますが、これは子どもにとっては窮屈なものです。その点、『オバケとパンツとお星さま』展は、はしって、さわいでOKの画期的な展覧会です。最初の展示室にある《変身コーナー「ひとついつもとちがうわたし」》は、『オバケとパンツとお星さま』の世界を、変身して楽しもうというのがコンセプトです。このコーナーを担当しているのが、ファッションデザイナーの伊藤弘子さんとアーティストの松岡武さんのアートユニット「ゼロゼロエスエス」です。伊藤さんが主宰するブランドHISUI(翡翠:ヒスイ)は私の大好きなブランド。伊藤さんとは、普段から“美人の定量化” といった私の研究テーマについてもお話しをしていまして、今回の展覧会のお話しの際に、面白い事ができるのではないかと考えました。それが、変身した子どもたちにバーチャル技術でもっと変身を楽しんでもらう《変身コーナー「勝手に変身」》で、テクニカル・ディレクターとしてお手伝いをさせていただきました。実際の技術開発については、私が以前所属していた東京大学相澤清晴研究室の朏島一樹さんにお願いしました。
ー「勝手に変身」とはどのようなものですか?
まず、こどもたちや参加者が展覧会場にある布や紐を自由に使って自分でアレンジしたオリジナルの衣装をまとい、その姿を自動撮影します。撮影した姿は自動的に顔認識され、次の装置で顔部分が抜き取られた姿で投影され、そこに他の人物が顔をはめ込みます。こうして異なるフェイスとボディのデータがどんどんアーカイブされていくとうものです。言葉で説明してしまうと、なんとも味気ないのですが、オリジナル衣装で変身した子どものボディにパパの顔とか、スタイルのいい女性のボディにお髭のおじさんの顔とか、を思い浮かべていただければ、現場がどれだけ楽しいかすぐご理解いただけると思います。
ここで使用した等身大のディスプレイは「SUGATA MIRROR」という装置で、以前より相澤研究室でSHARPの協力により開発しているものです。自分の姿を見る姿見に、自分のワードローブから衣服のデータを合わせて、毎日のコーディネートに使えるようにするものです。この技術そのものを、私は新しい「自己認識メディア」だと考えています。これまで人は、水面や鏡を通じて自分の顔を認識してきましたが、今ではスマホのカメラとディスプレイで自分を映して認識するのが当たり前になっていますよね。
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2013/09/02| TAGS: beauty
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