今年11月、初の著書『はみだす力』(宝島社)を出版、「情熱大陸」での特集放映、そしてMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの助教授に就任するなど、勢いはとどまるところを知らないアーティスト・スプツニ子!がポジティブに女性へと発信するメッセージを伺った。
「1969年のアポロ11号月面着陸以来、いまだ月には白人男性の足跡しか残されていない。それってなんだかおかしいでしょ?」
た、たしかにその通り。
軽快な語り口で、人類史を覆すような発言をさらりと言ってのけるスプツニ子!。現在、東京都現代美術館(MOT)で開催中の『うさぎスマッシュ展 世界に触れる方法(デザイン)』に出品中の『ムーンウォーク☆マシン、セレナの一歩』は、ギークガールが独自に獲得した宇宙技術を使って、月面にハイヒールの足跡を残そうとする物語をミュージックムービーに仕立てた作品。その着想のきっかけは、YouTubeで話題となった13歳のアメリカの女の子の動画だった。
「たった13歳の女の子が、独学で宇宙技術を学び、ハローキティを乗せたゴム気球を成層圏まで飛ばしたんです。これまでの宇宙開発は政府主導による政治的なものだったと思うけど、こんなかわいいアマチュアサイエンティストが宇宙に近付けちゃったことに感激したのがきっかけ。そこからどんどんアイデアが膨らんで、女の子がつくったハイヒールが月面着陸するような物語を考えました」
まずは、この動画をご覧いただきたい。
『ムーンウォーク☆マシン、セレナの一歩』
作詞作曲、歌い手はスプツニ子!本人。また、映像の途中には、主人公の女の子があこがれるスーパーヒーロー「ルナガール」としても登場する。戦闘服をまとったルナガールは、スプツニ子!が1985年生まれのセーラームーン世代だからだろうか。
ガーリッシュでポップな音楽と映像に注目しがちな本作だが、実際にテキサス州ヒューストンにあるNASAの研究者たちのリサーチ協力を得ているというから驚き。元々、NASAとも関係があるUSRA(大学宇宙研究協会)が宇宙研究のアウトリーチ活動の一環としてコラボレーションできるアーティストを探している、という連絡がスプツニ子!のもとに届き、すぐさまコンタクトを取ったのが作品制作のきっかけだったとか。
「実際にNASAまで行って、何人もの研究者とお話することができました。サイエンティストやエンジニアって、とてもエキサイティングで、アーティストと似た感性を持っているんですよね。非日常なことをすぐに受け入れてくれる感覚があるんです。『月面にハイヒールの跡を残したい!』って告げたら、すぐに面白がってくれて、色々とアドバイスをいただきました。また、私は両親が数学者で、かつ超理数系なロンドン大学インペリアル・カレッジの出身でもあるので、数学者や科学者とも話しやすいところがあったんだと思います」
また、映像やマシンの制作などにも多くのクリエイターが関わっている。自ら直接コンタクトをすることもあれば、SNSでボランティアを呼びかけることもあるという。
「自分でできないことは、単身で乗り込んでいって、才能ある人たちと一緒につくる。それがスプツニ子!流なんです。資金集めから人材集めまで、全部ひとりで電話をかけて依頼しました。たとえば、美術館で展示の際にリアルな月面を再現したくって、2トンもの砂を用意したんですが、どう考えても人手が足りない。そんなときはTwitterで『誰か手伝って!』って発信したら、すぐに学生さんがスタッフとして集まってくれました」
「この作品を発表したら、予想以上に女の子たちからの反響がありました。考えてみれば、『がんばる女性』をこんなにポップに扱うものってあんまりなかったんじゃないのかな? 女の子がやりたいことを素直に実現できるエネルギーは強いですよ。それに、女性は良くも悪くも正直で、自分には『これ、できない』ってすぐに認めてしまうところがある。でも、『できる』って言っちゃったときから始まることもあると思うんですね。見栄を張ったからには、やるしかない。でも、それが自分のできることの枠を少しずつ拡げていくのにつながるんじゃないかな。世の女性にも、『まずは、やってみよう!』って伝えたいですね」
『ムーンウォーク☆マシン、セレナの一歩』が出品中の展覧会『うさぎスマッシュ展 世界に触れる方法(デザイン)』は2014年1月19日まで。
また、もっとスプツニ子!という存在を知りたい方は、11月に出版された『はみだす力』もぜひのぞいてみよう。
[書籍情報]
[展覧会情報]
うさぎスマッシュ展 世界に触れる方法(デザイン)
会期: 2013年10月3日(木)〜2014年1月19日(日)
会場: 東京都現代美術館
開館時間: 10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日: 月曜日(ただし10/14、11/4、12/23、2014/1/13は開館) 12/24、年末年始(12/28-2014/1/1)、2014/1/14
入場料: 一般1,100円/大学生・65歳以上800円/ 中高生600円/ 小学生以下無料
http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/148/
text : Arina Tsukada
photo : momoko japan
2013/12/13| TAGS: culture
lifestyle
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