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誰の作品!? 真似してみたい!! 身近な文房具で描かれた素敵な夜景アート

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大村さんが文房具の「丸シール」で夜景を表現する絵画を制作し始めたのは、多摩美術大学の在学中のことだったそう。

 

『油彩画を専攻していたのですが、学校では「油彩をオーソドックスに油彩用の画材で描く」ことだけでなく、「技法や画材を各自が工夫して絵を描く」ことにも寛容でした。その中でさまざま試行錯誤を繰り返す中、身近な夜景をテーマに、身近な文房具「丸シール」で絵画を描く手法を思いついたんです』

 

この「丸シール」で描かれた夜景の絵画は、素材の意外性とビジュアルの美しさで注目され、瞬く間に話題となった。

 

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<複雑な光の表現も、さまざまな大きさや色の「丸シール」を組み合わせて表現>

 

 

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<大村さんが使用しているシールはすべて「市販品」だという>

 

 

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<下絵をパソコンで制作。その下絵に基づいて、1つ1つ手作業でシールを貼っていくという、パズルづくりのような繊細な作業>

 

『私は、アートは「教育を受けた人、特殊な技法を身につけている人だけの特別なものではない」と思うんです。誰にとっても身近であり、誰もが楽しめるものがアートとして一番優れているんじゃないかと。そういう意味でも、“身近”な夜景を、“身近”な「丸シール」で描くことは重要なんです』

 

と語る大村さんは、いま誰もが作品づくりに参加できるように、実際に作品制作方法のマニュアル化にも取り組んでいるという。

 

『作品づくりの技法が完成したものであれば、誰もがアートを生み出すことができるはずです。以前も大きな作品をアルバイトを雇って制作したことがあるんですが、そのときと同様に技法を完全にマニュアル化して、そのマニュアルを見れば誰もが作品づくりに参加できるという形まで昇華させることが理想形なんです』

 

と、一アーティストというよりはプロデューサーやディレクターのような立場で創作活動を展開していきたいようす。

 

最後に今後の展望についても聞いてみた。

 

『先日香港を訪問したときに、オークション会社のクリスティーズの副社長さんから「ご自身のルーツである日本を作品に落とし込んでみては?」というご意見をいただきました。とても今の自分自身にしっくりときたので、まずはその部分を追求してみたいと思っています。日本古来の風景や日本の文化を象徴する場所を題材にしたり、屏風や扇子など日本らしい独特な工芸品をキャンバスにしたりと、もう一度自分の原点である「日本」を作品づくりを通して見つめ直していきたいですね』

 

いまや日本だけでなく、世界中から注目される存在となりつつある大村さん。現在は創作活動と並行して、「丸シール」で絵を描くワークショップも各地で開催しているそうなので、ぜひ参加して「丸シール」アートにみなさんもチャレンジしてみては??

 

 

 

—PROFILE—

 

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現代美術家:大村雪乃(Ohmura Yukino)

1988年生まれ。神奈川県、横浜育ち。2013年、多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻 卒業。2012年、Tokyo Midtown Awardのアート部門にて入選・オーディエンス賞を受賞。

 

http://yukino-art.tumblr.com/
http://yukinoartwork.blogspot.jp/

 

 

photo (interview):Akihiro Itagaki

 


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