映画の主人公に影響されて、いつもより明るい色の服を選んでみたり、笑顔が大きくなったり、すこし早めに起きて髪をカールしてみたり。また、映画によって忘れていた感情が湧き上がってきたり、自分自身と深く向き合うことになったり、知らない世界を追体験して刺激を受けたり。
そんな体験が、誰にでも一度はあるのではないでしょうか?
身体と同様に、こころもエクササイズが必要です。週に1本映画を観ることで、こころの筋肉をしっかりと動かし、“きれい”を活性化しませんか?
そんな“きれいになれる”映画を紹介する【うるおい女子の映画鑑賞】。第2回はアメリカのドキュメンタリー映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』です。
【『ビル・カニンガム&ニューヨーク』DVD好評発売及びレンタル中 ¥4,700(税抜) 発売元:株式会社ドマ 販売元:ハピネット (C)The New York Times and First Thought Films.】 ※2015年9月14日現在
ニューヨークで最先端のストリート・ファッションのスナップの数々!カラフルで個性溢れる着こなしに、見ているだけで気分もあがります。
なんとこれらの写真、87歳のおじいちゃん・・・いえ、ファッション・フォトグラファーが撮っているのです。
【あのアナ・ウィンターも”おじいちゃん”の前でだけは、しっかり立ち止まってポーズをとります】
米VOGUE誌編集長のアナ・ウィンターに「わたしたちは、いつもビルのために着るのよ」と言わしめるファッション・フォトグラファーがいます。それこそがこのおじいちゃん、ビル・カニンガム、現在87歳です。映画『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じた鬼編集長のモデルとして有名な彼女をしても、ファッションがきまっていないときにはシャッターを切られないこともあるらしく、「ビルに黙殺される」と恐れているほどファッション界のトップにおいてその存在は特別なもの。
【「ストリートが語りかけてくるのを待つんだ」と87歳にして超現場主義。愛車の自転車でニューヨークの街を颯爽と駆け回ります】
『ビル・カニンガム&ニューヨーク』は、「最高のファッション・ショーは常にストリートにある」という言葉をモットーに、ニューヨークのストリートで50年以上“生”のファッションを撮り続けてきた生ける伝説、ファッション・フォトグラファー、ビル・カニンガムを追ったドキュメンタリー映画です。
【ファッション業界の人間に「ビルは見ているものが違う」と言わしめる独自の視点】
ビルは、ニューヨーク・タイムズ紙でストリート・ファッションのコラムと社交界のコラムを担当し、年に2回パリコレに飛びます。ある高級メゾンのファッションショーでは顔パスのVIP待遇で、プレス席ではなく、セレブたちと肩を並べて座るフロントロウでシャッターを切ります。シャッターを切るか切らないかの判断はいたってシンプルで、ファッションがいいかどうか、それだけです。ストリートでもファッションショーでも、着ている人がモデルでも女優でも一般人でも、そんなことは関係ないのです。
ビルが捉えるファッションは“リアルなのにエレガント”。その審美眼はときに残酷であり、誰よりもストイックにファッションと向き合うのです。撮影交渉に8年、撮影と編集に2年かけた本作が紐解く、ビルの謎に包まれた私生活は、あっけにとられるくらいに質素。そもそもトレードマークのブルーのジャケットはパリの清掃員の作業着。コーヒーは安ければ安いほど美味しいと笑い、一人暮らしの狭いアパートの自宅には、ネガを保存するキャビネットがほとんどのスペースを占め、簡易ベッドがぽつんと置かれているだけ。
底抜けにピュアな動機でファッション・スナップを撮っているビルは、お金や名声には興味がなく、なによりも大切にしているのが「自由」であること。そのかわり仕事においては一切の妥協を許さず、相手が誰であろうとストレートに主張をするため、ニューヨーク・タイムズ紙の偉い人たちともほぼ全員と喧嘩したとか。現アート・ディレクターには「ファッションのことなんて何も知らないんだから(黙っとけ)」と言い放ち、挙句の果てに現像写真を店に取りに行かせるというパシリ扱い。
【毒舌だけどチャーミングなビル。この人懐っこい笑顔と少年のようにピュアにファッションを追いかける姿には感動せざるを得ない】
仕事をしている人間なら誰でも、この87歳のおじいちゃんの強烈なエネルギーと健全なマインドに感銘を受けるはず。嬉しいときは顔をくしゃくしゃにして、その場で飛び跳ねてしまう無邪気さに、「失くしてはいけないもの」を考えさせられます。
きらびやかなファッション、ニューヨークの街、そして生きる伝説ビル・カニンガムの突き抜けた人生。週末の「おうちシネマ」にいかがでしょうか?
text:kanacasper(カナキャスパ)(映画・カルチャー・美容ライター/編集者)
編集を手がけた韓国のカリスマオルチャン、パク・ヘミン(PONY)のメイクブック『“かわいい顔”はつくるもの! 秘密のオルチャンメイク』(Sweet Thick Omelet/DVD付/¥1,500・税別)が好評発売中。こころもからだも豊かに美しくしてくれる日々の”カケラ”をブログで収集中。
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2015/09/14| TAGS: culture
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