「旅に出たらいいことはわかっているけど、最近、金も時間もないんだよねぇ。疲れちゃったよ」

先日、懇親会で横になった中年男性が嘆いていました。

 

若い頃は旅によく出ていたが、会社に入り、結婚し、子供が生まれ……

 

歳を経るごとに以前のように自由がきかなくなったらしい。

 

人生を歩んでいくと様々な時期があります。

 

 

 

私の場合、昨年は母親の介護とリハビリに明け暮れ、翻弄されていました。

 

旅も、ほとんど出られず、毎日、病院通いで精神的な余裕もありませんでした。

 

 

 

そんなある日のことです。自家用車を修理に出してしまい、

 

母が入院していた病院まで路線バスで行くことになりました。

 

 

バス停まで歩き、バスの一番後ろの席に座りました。

 

特に目新しいものなど何もありません、いつもと違う高さから街を眺めるだけでした。

 

しかし、それだけで妙にほっとしたのです。

 

強張っていた何かが解き放たれていくようにさえ感じました。

 

 

普段の生活の中で交通手段を変えるだけでも「小さな旅」になることを知りました。

 

今も介護生活は続いていますが、ペースもつかめ、以前と同じように旅にも出るようになりました。

 

それも、あの「小さな旅」がきっかけだったように思います。＜text：イシコ　http://sekaisanpo.jp/＞