プチプラ価格のデザイン性に富んだホームグッズが人気のIKEA。最近では著名なデザイナーとのコラボに力を入れていることでも知られていますが、今季新たにタッグを組んだのはオランダ人のデザイナー、ピート・へイン・イーク氏(以下、イーク氏)。チェア、テーブル、照明、キッチン用品など、手づくり感や個性に富んだ新コレクション「INDUSTRIELL(インドゥストリエル)」の魅力をチェックしてみましょう。
▲木のぬくもりとクラフト感あふれるチェア(6色展開 各¥14,990)とテーブル(2色展開 各¥39,990)
|コラボのスタートは“共通の想い”から
廃材をリサイクルした美しい作品を手がけているイーク氏にとって、「低価格」「大量生産」のIKEAとのコラボは大きな挑戦。家具職人でもある彼が手がける“一点もの”は完成までに多くの手間と工程がかかるため少量ずつしか供給できず、コストにも反映してしまうのが現状です。
一方、IKEAのように「大量生産」を前提としたアイテムは、一般的に低コストと生産効率を重視する反面、どれも一様で画一的なアイテムになってしまうことが多いのです。
▲デザイナーの ピート・へイン・イーク氏(左)とIKEAクリエイティブリーダーのカリン・グスタフソン氏(右)
イーク氏も「普段はIKEAと真逆のアプローチをしているのだけれど、お互いに“高品質のものを低価格で、多くの人々に届けたい”という想いを持っていることが分かりました。そこで、これまでの自分のデザインや手法と全く違ったことができるチャンスだと考え、このコラボを通して職人による手作りの家具を誰もが手軽に使えるようになってほしいとチャレンジした」と語ります。
こうして、プロジェクトはスタートをきりましたが、「低価格」「大量生産」を実現するためのプロセスは想像以上に厳しかったそうで、実際何十個ものデザイン案が初期の段階でほとんど消えていったと言います。そんな困難な中ディレクターや多くの職人さんとディスカッションを繰り広げながら誕生したのが新コレクション「INDUSTRIELL」なのです。
|1,000人で生み出す“一点もの”
イーク氏が新しいものづくりを模索する中で最後までこだわり抜いたのが、“一点もの”だけが持つ「テイスト」や「手づくり感」。例えばシェルフ1つをとっても、素材の持ち味のコブが通常の量産するやり方だと失われてしまうため、デザインは同一でも約1,000人ものIKEAの作り手にそれぞれ全く異なるやり方で作業をしてもらうことにして、一点一点の個性を引き出したと言います。
▲複数を縦または横に連結できるシェルフユニット(¥12,990~)
こうした生産に対する細かなこだわりは同シリーズの他のプロダクトにも共通しています。
チェックやストライプ柄がイレギュラーに並んだキッチンタオル(下写真)に使用されているファブリックは一見すると手織りのようで、実は高性能の機械織り機で量産されたもの。手書きのタッチを再現するため、細かなデジタル化作業が繰り返し行われたそうです。
▲デザイナーが手描きした模様を再現して織り上げた生地を使用したキッチンクロス(¥799/2ピース)
またグラスウェア(下写真上)ではプレス機で左右別々につくったものを組み合わせバリエーションがでるように生産されていますし、陶器の花瓶(下写真下)は手作業でつくられた複数の試作モデルが型として採用されています。
▲異なる金型で成型され様々な表情が楽しめるグラス(¥149)
▲ひとつひとつ手ごねような質感が楽しめる陶器の花瓶(¥2,499)
「ズレている、間違ったようにみえる。その不完全さこそが人間味であり、作品の‘リッチ’さを生み出す」とイーク氏が語るように、「大量生産」「低価格」で“1点もの”を生みだすための細かな工夫が、プロダクトごとに秘められているのです。
|IKEAのサスティナブルな哲学は新コレクションにも
IKEAを語る上で外せないキーワードの1つが「サスティナブル」。この哲学はイーク氏にも共通するもので、新コレクションでもしっかり貫かれています。「大量生産すると廃材もおのずと大きなものになってしまう。だから、素材を最大限活かし切ることを目標にした」とイーク氏が語る通り、どの製品においても丁寧な設計がされていて、例えば先ほど紹介したシェルフはのこぎりで裁断するときとネジ穴をあけるときに出る木屑以外に無駄が出ないようにすべての素材を活かす設計がされています。
「自分のDNAと哲学がつまった作品たち」とデザイナーのイーク氏も太鼓判を押すIKEAの新コレクション「INDUSTRIELL」。リーズナブルに“一点もの”の魅力を愉しめますので、ぜひ実際に手に取って“不完全さが生みだす美しさ”をインテリアに取り入れてみてくださいね。<text:Ayako.I>
2018/05/07| TAGS: 2018春夏
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