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越後妻有で人気の怖い&不思議な空間アート

背筋のゾクゾク感も作品の一部。越後妻有アートトリエンナーレで人気の“怖い&不思議”な空間アート

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日本有数の豪雪地・越後妻有で開催中の世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ 2018」。およそ200の集落に多様なアート作品が散在していますが、中でも特に興味深いのが空き家や廃校内に一体化したような作品たちです。

 

そこで今回のレポートは松代(まつだい)、松之山(まつのやま)エリアを中心に背筋がゾクゾクするような、ちょっと怖くて不思議な人気の空間アートを3つ紹介します。

 

 

 

|最後の教室/C.ボルタンスキー+J.カルマン

 

 

フランスの作家、C.ボルタンスキーとJ.カルマンの作品「最後の教室」。廃校が舞台となるこの作品は、入った瞬間に漂う匂いと目の前に広がる底なしの暗闇といった雰囲気に一気に感覚が狂ったような不思議な感覚に包まれます。暗闇に目が慣れてくると少しずつ音や匂いの実態が見えてきますが、それまではまさしく無言で立ち往生。発する言葉さえも圧倒されてしまうでしょう。

 

作品に入った瞬間の衝撃から程なくして次の仕掛けを体験。重たい心臓のような重たい音が鳴り響く廊下を歩いていきます。

 

 

正面には煌々とした光と排気ダクトのようなくるくる回るものが。

 

 

後戻りしたくない感覚に襲われますが、思わず振り返ると、、、

 

 

背後に見えるのは自分の影なのですが、壁から遠ざかれば遠ざかるほどに影は大きくなっていくのです。そして階段を上って2階へ行くと、建物内に響く音の音源がありました。

 

 

ストロボライトの点滅と、心臓の底にまで鳴り響くような重たい爆音で、理由もなくその場にいられない恐怖に包まれます。廃校の教室1つ1つに作品が展示されているのですが、いずれも言葉では説明できないゾワゾワとした恐怖感を覚えるのです…。もちろん、お化けが出てきたり、心霊現象のような仕掛けがあるわけではありません。

 

▲真っ赤な廊下の右に陳列する黒い額縁は一体?! ネガティブな想像を掻き立てられます

 

▲白い布で覆われた廃校の机や椅子

 

▲大小様々な鏡に囲まれた部屋。一番怖いのは黒い鏡に映る真実の自分自身なのかも…

 

▲白い布とアクリルケースで構成された不思議な作品。大小多様な棺桶を連想させられます…

 

▲一瞬、本当に人が寝ているのかと思ってしまいました(泣)

 

さらに、廃校内にはC.ボルタンスキーが手がけた2018年の新作「影の劇場」も。暗闇の奥でガイコツやコウモリ、天使などが踊る幻想的な影絵が“閉ざされた世界”を想起させます。

 

 

これらの作品は、5ヵ月もの間深い雪に閉ざされる妻有の地域の特徴をも表現されているかもしれません。

 

 

 

|黄金の遊戯場/富福亮

 

外観はいたって普通の木造建築の「黄金の遊戯場」。

 

 

一歩足を踏み入れると、外観からは想像もつかないような豪華絢爛な遊戯場が出現。金色に塗装された日用品や工業品などをパーツに、壁や天井など一面がデコレーションされています。

 

 

 

▲屋内を埋め尽くす無数の絵画や絨毯、装飾物がただただ圧巻。たくさんのお面に見つめられながら、空中マージャン部屋は高所恐怖症の人には地獄にも思える空間

 

▲階段の踊り場には千手観音様

 

▲着物の帯で埋め尽くされた部屋

 

ギラギラとした屋内で麒麟や鳳凰が遊びを見守られながら、狼男や人魚のミイラ、はたまた即身仏まで現れる。 息つく暇もない、クレイジーなお家といった印象のこの作品。絵合せゲームやワークショップなども開催されるなど、作品内で実際に遊ぶこともできますよ。

 

 

 

|つんねの家のスペクトル/アネット・メサジェ

 

築150年の空家に9つの作品が展示された「つんねの家のスペクトル」はアネット・メサジェが手がけた作品です。室内に入ってまず目に飛び込むのが吹き抜けの梁から吊るされた人工皮革や綿を使ったはさみ、包丁などの柔らかいぬいぐるみ。

 

▲ぬいぐるみはすべて地域の人々やボランティアの手作りとのこと

 

作品名にある「つんね」は屋号であり“山の上”という意味だそう。家から出て、何気なく見上げた屋根には、恐ろしい想像を駆り立てられるような髪の毛の塊のようなものを発見!

 

 

 

「多くの家族がこの住居で生活し、子どもが生まれ、育ち、旅立っていった。…日常のいくつかのエレメントを私は再構築してみたくなった」とアネット・メサジェは語っていますが、恐怖心のためか目に入るもの全てが怖く見えてしまい、ただただ言葉を失ってしまう。そんな体験をしました。

 

 

もちろん見る人によってアート作品から受ける印象は様々ですが、背筋までゾクゾクする恐怖感も作品鑑賞の醍醐味の1つ。「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ 2018」では今回紹介した3作品とは対照的にハッピーで穏やかな気持ちになれる作品も数多く鑑賞できます。ぜひこの機会に多彩なアート作品に触れ、自分らしい感性を新たに発見してみてくださいね。<text:下重佳奈子 Kanako Shimoshige photo:beauty news tokyo編集部

 

 

「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2018」 2018年7月29日(日)〜9月17日(月) 公式サイト:http://www.echigo-tsumari.jp/


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