日本でも指折りの桜の名所として有名な奈良県の吉野町。広範囲にヤマザクラが咲き誇る様子は壮観で、「千本桜」や「一目千本」と呼ばれるほどに見る者を圧倒する絶景となります。ですが、実は春の季節以外でも魅力たっぷり。それでは紅葉、神社仏閣、ご当地グルメなど、有り余る魅力をチェックしてみましょう。

 

 

 

｜自然に囲まれた吉野の四季

 

吉野町は奈良県のちょうど真ん中あたりに位置し、北部の奈良市などと比較するととても自然に溢れていて、四季折々の見どころがあります。

 

 

町には吉野川が流れ、その南北両側に山がそびえる地形で、山間の町として古くから多くの旅行者を迎えてきた歴史を持っています。町全体にゆったりとした時間が流れているかのようで、ホッと一息をつくにはピッタリ。特に吉野川と夕焼けを眺められる時間帯は、忙しさとは無縁のリラックスした時間を過ごせること間違いなしです。

 

また、吉野山の桜が有名ですが、秋には紅葉が至る所で見られ、吉野山では神社仏閣めぐりをしながらの紅葉狩りを愉しめます。

 

 

吉野山には吉野駅でケーブルカーに乗り換えてアクセス可能（ケーブルカーが休みの時は代行バスが出ていますが、予め運休日をチェックしておきましょう）。

 

 

また、吉野山の他にも手軽に出かけられる紅葉スポットとしては、吉野川の北岸にあたる上市という地区の「大師山寺（だいしさんじ）」周辺が有名。境内からは視界いっぱいの紅葉と吉野の景色を愉しむことができます。

 

 

 

｜吉野の旅では外せない神社仏閣めぐり

 

桜や紅葉が美しい吉野山は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部でもあり、多くの見どころが点在していますが、欠かせないのが神社仏閣めぐりです。吉野山は３つのエリアに分けられ、「中千本」と「上千本」エリアでは４つのスポットが世界遺産に登録されています。その中でもぜひ訪れたいのが修験道の総本山とされる「金峯山寺（きんぷせんじ）」です。

 

 

東大寺大仏殿に次ぐ巨大な木造建築である本堂は「蔵王堂（ざおうどう）」とも呼ばれ、吉野山のシンボル的な存在。その堂々とした姿は、ついつい見惚れてしまうくらいの迫力を備えています。

 

 

また、中千本エリアでは、首より上の守り神として頭の病気や学力向上にご利益がある「脳天大神（のうてんおおかみ）」を参拝するのもおすすめ。

 

 

金峯山寺からは階段を下っての参拝となりますが、途中には鳥居がいくつも並んでいて、周囲の自然も相まって、とても神聖さを感じられるスポットとなっています。

 

 

階段が長いので体力は必要となりますが、金峯山寺周辺とはまた違った雰囲気なので、ぜひ一緒に訪れたい場所。歩きやすい靴と服装で出かけてみてください。

 

 

 

｜葛を使った吉野のご当地グルメ

 

最後に、吉野を散策する際に愉しみたいご当地グルメを紹介します。中でも押さえておきたいのが、品質の高さで知られる「吉野葛」を使った料理です。葛はお鍋の具材に使われたり、「くずきり」としておやつとして食べられたりなどのイメージはあると思いますが、それ以外ではあまりどういった場面で食べられているのかわからない方も少なくないでしょう。そんな方にぜひ試してもらいたいのが、葛の粉を麺の一部に使った「葛うどん」です。

 

 

 

一般的なうどんよりもツルツルとしたなめらかな食感が特徴で、吉野には多くの手延べのお店があります（中には、葛うどんだけでなく葛そうめんを取り扱っているお店もあります）。

 

もちろん「くずきり」をスイーツとして注文できるお茶屋さんも多く見られます。

 

 

注文を受けてからその場で作られるくずきりはプルッとした弾力があり、黒蜜との相性もバッチリ。ぜひ食後や散策後にいただいて見た目の美しさも堪能してみてください。

 

また店内で食べるだけでなく、持ち帰り用としても愉しめるのが「柿の葉寿司」です。名前の通り、鯖や鮭のお寿司を柿の葉で巻いたもので、吉野地方の郷土料理として有名。内陸に位置する吉野でこの料理が有名になったのには理由があります。

 

 

輸送手段が発達していなかった時代、魚は塩漬けにされて吉野まで運ばれてきていました。その魚を酢飯に載せ、さらに殺菌・防腐効果のある柿の葉で巻くことで保存性を高めたのが柿の葉寿司なのです。さらにその状態で数日間運ばれると、塩漬けにされた魚は旨味を増し柿の葉の効果で臭みも無くなるというとても合理的な料理というのも特徴です。実際に食べてみると少し塩味が強く、魚の臭みはほとんど感じられないので、押し寿司ならではの味わいを愉しめます。

 

 

吉野は町自体はそれほど大きくありませんが、自然や神社仏閣などの見所が豊富にあり、旅先としての魅力に溢れた場所となっています。

 

 

また、ぜひ散策を愉しんだ後には吉野という土地だからこそ生まれたご当地グルメをお土産にしてみてくださいね。＜text＆photo：岡本大樹＞