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今も残る数少ない武士の町・金沢。ガイドさんの案内で巡る【長町武家屋敷跡】

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ここは加賀藩士野村伝兵衛信貞(のむらでんべえのぶさだ)の屋敷跡で、江戸時代からの土塀や庭園が残ります。建物は加賀大聖寺(だいしょうじ)藩で北前船の豪商だった久保彦兵衛の邸宅から、180年前に建てられた離れを移築。「まいどさん」の案内はありませんが、藩政時代の雰囲気をたっぷりと味わえます。

 

▲「武家屋敷跡野村家」

 

野村家は、アメリカの庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」で日本庭園ランキング3位を獲得したことがあり、ミシュラングリーンガイドでは現在も2つ星を得ています。

 

▲1584年の末森城の戦いで、野村伝兵衛が前田利家軍の一番槍を務めたときにまとった鎧と言われます

 

▲江戸時代そのままの庭園は、この屋敷の最大の見どころです

 

当時のままの庭は、大野庄用水から水が引かれて池を作り、樹齢400年の木が茂ります。中でも保存樹に指定されている山桃の木は北陸では珍しく、主君前田利家の出身地尾張から苗を取り寄せたと言われます。

 

▲賓客を迎えるための「上段の間」

 

総桧造りの「上段の間」は、豪商だった久保彦兵衛が大聖寺藩の藩主をもてなした部屋。格天井や黒壇材、ギヤマン硝子をはめ込んだ障子戸にくわえ、二方向が庭に向かって開かれた間取りなど、さり気なく贅を尽くした客室です。加賀藩お抱えの狩野派の絵師、佐々木泉景の絵も飾られます。

 

▲「謁見の間」の襖絵は、大聖寺藩の藩士で絵師でもあった山口梅園が描いた白牡丹

 

▲独特の意匠にこだわった釘隠し。他に様々な形の釘隠しも展示されています

 

▲2階の茶室「不莫庵」では、庭園を見下ろしながら立てだしの抹茶(¥300)をいただけます

 

▲「不莫庵」の天井は、桐板に神大杉の地中部分を張り付けた珍しい造り。畳組みと同じ縁取りがされています

 

▲控えの間の床板には樹齢1000年の紅葉の一枚板が使われます

 

▲野村家の資料が展示された資料室

 

▲沖田総司や東條英機も愛用したことで知られる金沢の刀鍛冶、加州清光の脇差

 

加州清光の刀剣を常設展示しているのは野村家のみ。この刀を見るためにわざわざ来る人もいるほどです。

 

▲野村伝兵衛の主君朝倉義景が1566年10月9日に書いた手紙は、敵の首を打ち取ったことへの感謝状です

 

加賀藩士だった野村伝兵衛信貞は、越前出身の侍で朝倉義景の下で働き、のちに明智光秀に仕え、本能寺の変から2年4カ月後には前田利家の下で一番槍を務めます。勇猛果敢かつ波乱万丈の人生だったことがうかがえます。

 

▲明智光秀からの感謝状には野村伝兵衛の活躍で戦に勝てたことと、傷の心配が書かれ、光秀の人となりが伝わります

 

野村家は明治維新後の廃藩まで11代にわたって主君の乗った馬の周囲を警護する御馬廻組(おうままわりぐみ)の組頭や奉行職を務めます。美しい庭園と豪商の屋敷、そして数々の展示品など、武家時代の風情を肌で感じることができます。

 

<武家屋敷跡 野村家> http://www.nomurake.com/

 

 

金沢の【長町武家屋敷跡】をボランティアガイドの「まいどさん」と巡ることで、武家社会の仕組みや町の見どころを教えてもらえる貴重な体験が待っています。数少ない現存する武士の町を、ぜひ満喫してみてくださいね。<text&photo:みなみじゅん 予約・問:金沢市観光協会「観光ボランティアガイド係」 https://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/volunteer/


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