旧目黒雅叙園は1931年(昭和6年)に本格的な北京料理と日本料理を提供する料亭として目黒に開業。現在はホテルの最も奥に中国料理「旬遊紀」があり、ランチとディナーをいただけます。特に、創業者の細川力蔵が昭和10年に考案したとされる回転テーブルは現存するものでは世界最古と言われ、今も個室「玉城」で使われています。
▲中国料理「旬遊紀」
▲低い位置にある扉の取っ手
中国料理「旬遊紀」には旧目黒雅叙園から移築し再現された個室が2部屋あり、「玉城」と「南風」はどちらも扉の取っ手が低い位置にあります。当初畳部屋だったため、ひざまずいてドアの開け閉めをしていた頃の名残りです。
▲個室「南風(なんぷう)」
建物の設計は、鹿鳴館や神田駿河台のニコライ堂を設計したイギリス人建築家ジョサイア・コンドル。壁画や天井画は日本画家の堅山南風の手によるもので、細川力蔵がとても気に入り、社長室として利用しました。
▲「南風」の回転テーブルには螺鈿細工で鳳凰の姿が描かれます
▲現存する最古の回転テーブルがある個室「玉城(ぎょくじょう)」
扉は朱塗りで、美人画の大家益田玉城が壁の絵を描いています。モデルは新橋の芸者たちですが、みな顔が似ています。これは玉城が愛妻家だったため、似てしまったと伝わります。
▲現存する最古の回転テーブル。その螺鈿細工をよく見ると、無数の穴が……
螺鈿細工に点々と残るタバコの焼け跡。残された焦げ跡もホテルの歴史の一部として、どんな人物が焦がしたのか思いを馳せるのもまた一興。ホテル雅叙園東京の美術品を見てまわると、あえて補修していない作品も多く、90年を超える時を感じられます。
▲益田玉城による壁画や天井を彩る装飾は絢爛豪華。ここでも天井を照らす照明器具が使われます
▲館内の瓦にも注目。丸い巴瓦にロゴが入る特注品です
「神は細部に宿る」とは、近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエの言葉。細部にまで徹底してこだわった【ホテル雅叙園東京】は、創業者細川力蔵の情熱と画家や職人たちの技巧を凝らした技により、“絢爛豪華”という名の小宇宙を作りあげています。そんな奇跡に出会うひと時を、ぜひ楽しんでみてくださいね。<text&photo:みなみじゅん 予約・問:ホテル雅叙園東京 https://www.hotelgajoen-tokyo.com/>
2022/07/31| TAGS: lifestyle
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