「渓流アペロ」を終えると、店内に席を移し、コース料理を続けます。メニューの名前は「貝焼き味噌」を筆頭に、「鮪」「鯖」「鱈」「鮫と猪」などと至ってシンプル。想像力をかき立てられつつ、サーブされたときの驚きが増す趣向です。
▲窓際のテーブル席
「渓流アペロ」も驚きですが、テーブルに移っても驚かされるのが「貝焼き味噌」。泡がのったホタテ料理は芸術品のような美しさ。貝焼き味噌は本来ホタテの貝殻を鍋代わりに、ホタテやねぎなどをのせて、溶き卵でとじる青森の郷土料理ですが、それをフレンチ風にアレンジ。泡に味噌が使われ、いりこと合わせたホタテも風味豊か。初めはそのままいでただき、途中からトーストにつけて味の変化を楽しみます。
▲コースを通じてフランス「ジャン・ルイ・コケ」の器が使われ、白くきめの細かい質感と形が、「貝焼き味噌」をはじめ料理を美しく演出します
「貝焼き味噌」に合わせるワインは、意外なことに赤。南フランス・ローヌ地方にあるドメーヌ・ミュッサンの「クローズ・エルミタージュ」は、シラー種のブドウを使ったややドライなミディアムボディで、魚介の風味豊かな「貝焼き味噌」によく合いました。
▲「貝焼き味噌」に合わせた赤ワイン、ドメーヌ・ミュッサンの「クローズ・エルミタージュ レ・アントレクール」
“泡”の貝焼き味噌に続き運ばれるパンにも驚きが! 奥入瀬一帯は江戸時代、南部藩(盛岡藩)の領内だったことから、南部鉄器の鍋で焼き上げた逸品。火のとおりがよく、保温効果も抜群です。
▲ゲストの目の前でふたを開けると、こんがりと焼き目のついたパンが現れます
パン自体は料理に合うよう、あえてプレーンな優しい味わいに仕上げています。とはいえ、甘みを抑えたホットケーキのようなもっちりとした焼きあがりで、パンとホットケーキのいいとこどりをした味と食感が絶品。ディナーコースでしか提供していないので、パン好きの方は泊まる価値アリの美味しさです。
▲りんご酵母を使ったオリジナルのパンは抜群の美味しさ
冷前菜「鮪」も美しさ満点のひと品。鮪といぶりがっこを合わせたタルタルを敷いた上に、麹を使った鮪がのります。鮪の出汁と柚子風味のゆり根のピューレに、秋田名物の漬物「いぶりがっこ」の食感と燻製の香りが、鮮やかなアクセントになっていました。
▲冷前菜「鮪」は印象に残る味
ソムリエが冷前菜の「鮪」にペアリングしたのは、アルザス地方のオレンジ色をしたワイン「ヴァンサン・フライト ロランジュ・ド・ラ・デルニエル・コリーヌ」。いぶりがっこの強い風味に合わせたやや強めのミディアムボディです。
▲アルザスのオレンジワイン「ヴァンサン・フライト ロランジュ・ド・ラ・デルニエル・コリーヌ」
ふた品めの冷前菜は「鯖」。脂ののった鯖は塩でマリネした後さっと炙り、乳化させたネギや赤玉葱のマリネが飾られた見た目も美しい料理。鯖の香ばしいさや野菜の風味、酸味など、複雑な味わい楽しめます。
▲冷前菜「鯖」
鯖料理に合わせたのは、フランスロワール地方の「トゥレーヌ・ブラン」。ソーヴィニヨン・ブランの白ワインはすっきり爽やかな味わいで、風味の強い鯖に合わせてのペアリングです。
▲フランス・ロワール地方の「ドメーヌ・デュ・オー・ペロン」
|王道のフレンチを楽しむ温前菜とメイン料理
2023/02/23| TAGS: lifestyle
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