|描かれたモダンガールたち
橋本静水が描いたあでやかな扇絵が天井を飾る「静水の間」では、大正ロマンを代表する画家、竹久夢二の作品に出会えます。
▲展示テーマは竹久夢二の「描かれたモダンガール」
モダンガールたちの愛読誌『婦人グラフ』や『令女界』などに表紙絵や挿絵を描いた竹久夢二。『セノオ楽譜』や『中山晋平作曲全集』の表紙には、夢二らしい憂いをたたえた表情の女性たちが見られます。
▲大正15年『婦人グラフ』の表紙
婦人グラフは大正期に発売されていた高級雑誌で、色彩も華やかな夢二らしい挿絵や口絵がありました。
|モダンガールを描く異才、小林かいち
大正後期から昭和初期に活躍した小林かいち。1990年代から2000年代初頭に評価され、素性や性別さえ不明の謎の作家としても注目。2008年に遺族が名乗り出たことで、経歴が明らかになりました。京都のお土産店「さくら井屋」のデザイナーとして、絵ハガキや絵封筒のデザインを手がけ、その印象的な絵は一度見ると忘れられないインパクトを残します。
▲小林かいちの絵封筒
ヨーロッパやアメリカで時代の最先端だったデザイン様式アール・デコの影響や、夭逝の画家ビアズリーの作風などを垣間見ることができる小林かいちの絵封筒。
▲後ろ姿が美しい「さくら井屋」の絵葉書
小さな紙の中に装飾性の高い構図や色彩で描かれ、京都の魅力を表現した木版画。現代にも通用するモダンなデザインです。
|デカダンスと江戸川乱歩の文学
美人画で知られる鏑木清方の名を冠した「清方の間」は、大正15年(1926年)に発表された江戸川乱歩のホラー小説『人でなしの恋』を再現した劇場空間になっています。気鋭のイラストレーター夜汽車が描く乙女の本棚シリーズとのコラボで、沈思的で不穏な空気が支配します。
▲美と背徳。大正から昭和にかけてのダークサイドを表現します
物語は、美青年の地元の名士と結婚したうら若き女性が、蔵の中でささやき合う夫と女の声に気づきます。ある日その蔵へ忍び込むと、そこには大きな長持ちが置かれていて、中には……。怪奇文学の幻想世界にひたる展示です。
▲まさか、これが展示されているとは……
モダンガールが生きた時代の耽美的でインモラルな美の世界。
|階段廊下に立つ女性
最上段の99段目にある「頂上の間」では、この展覧会のために描き下ろした画家加藤美紀氏による絵が飾られます。昭和のはじめごろ、酒宴の席から抜けだして階段廊下にたたずむ和装の女性に、「清水の間」の天井画から飛び出した鳳凰が、何事かを告げようとする一瞬を描いています。時を忘れて魅入ってしまう一枚です。
▲頂上の間 「モダンガール その先の時代へ」
作中の女性が身にまとうのは、実際にモダンガールがいた時代の着物と帯。文化財「百段階段」を舞台に繰り広げられる物語を、ぜひ読み解いてみてください。
▲文化財「百段階段」の入り口にあるミュージアムショップでは、今回の展示にちなんだ商品も販売しています
【ホテル雅叙園東京】の東京都指定有形文化財「百段階段」で開催中の企画展『昭和モダン×百段階段~東京モダンガールライフ~』。現在放映中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』とも同時代。今と重なる時代の香りを楽しんでみてくださいね。<text&photo:みなみじゅん 予約・問:ホテル雅叙園東京 https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/nippon>
「昭和モダン×百段階段~東京モダンガールライフ~」
開催期間:2024年6月16日(日)まで 開催時間:11時から18時(最終入館17時30分) 休館日:なし 料金:大人¥1,600、大学生・高校生¥1,000、中学生・小学生から大学生¥800
2024/04/16| TAGS: lifestyle
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