|歳を経ると苦い想い出もいいものです
夕方の新幹線移動。
ハイボールを購入し、
スマホのアプリを開き、イヤホンからラジオ番組を流し、
車窓に映る夕暮れをぼーっと眺めながらちびちび飲み始めます。
選んだのは80年代のアメリカの音楽番組で87年のランキングでした。
車窓が暗くなり、窓に映る白髪頭の自分を見ながら、
1986年、18歳だった頃の自分と重ね合わせます。
大学生になり、静岡で一人暮らしを始めたばかり。
当時、名古屋在住の女子大生と遠距離交際していました。
もちろんスマホなどなく、連絡は固定電話。
まだ、留守番電話もありません。
ある晚、部屋に戻った際、電話が鳴り、取ると彼女からでした。
泣いていました。
大学生になったばかりの私は開放感に浸り、
同じアパートに住む幼馴染と毎晩のように遊びまわっていたのです。
なだめて電話を切った後、時計を見て、財布を確認します。
家庭教師の仕事を始め、初めてアルバイト代をもらったばかり。
名古屋行きの最終の新幹線に乗り込むことができました。
彼女が住むアパートに突然、行って驚かせようと思ったのです。
新幹線の車窓に映る姿を見ながら、
自分の行動に酔いしれていたのですから、今、思い出しても恥ずかしい。
名古屋駅に到着し、地下鉄に乗り換えました。
既に地下鉄も最終に近く、彼女が住む駅の一つ前までしか行きません。
一駅くらい歩けばなんとかなるだろうと思い、降り立ったのですが、そこは広大な霊園でした。
霊園の中を彷徨っているうちに、だんだん怖くなってきます。
ポツンと建つ公衆電話を見つけ、彼女に電話しました。
半べそかきながら。
自転車で迎えに来てもらいました。
彼女は喜ぶどころか複雑な表情をしていたなぁ。
その後、フラれました。
甘酸っぱい、いや、苦い想い出ですが、歳を経るといいものですね。<text:イシコ>
2024/06/15| TAGS: lifestyle
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