浅間山麓の豊かな森に囲まれた【星のや軽井沢】。メインダイニング「日本料理 嘉助」では、信州らしい山と川の幸が使われて、まさに “その土地の味” を満喫。時節ごとに変わるメニューは、夏だからこそ涼を感じる季節感。それでいて、青梅や、鱧や牛肉、鹿肉、ウナギなど、夏の体調を気遣う食材も忍ばせます。素材の魅力を引き出す味も、ぜひ楽しんでみてください。
|夕食は「山の懐石」
食事は宿のメインダイニングでいただくほか、インルームダイニングや商業施設「ハルニレテラス」など滞在に合わせて選べます。今回は「集いの館」にある「日本料理 嘉助」で季節の懐石料理「山の懐石」をいただきました。
店内は土地の傾斜に合わせて造られ、階段を上ってそれぞれのテーブルへと向かいます。そんなテーブル席は川床で食事を楽むイメージ。夜の灯りは吊るされた照明だけなので、落ち着いた雰囲気の中でディナーを楽しめます。
▲広々とした店内
初めに運ばれたのは、驚きと楽しさを演出するフレンチのアミューズのような一品です。「深緑 青梅甘露煮」は、梅を炊いた煮汁を凍らせ、その下に疲労回復効果がある青梅が隠れています。果実は柔らかく、氷も青梅の爽やかな甘酸っぱさが口に広がって、涼を楽しむ夏の「山の懐石」が始まります。
▲涼で始まる夏の一品「深緑 青梅甘露煮」
先附は山と海の食材を使った季節の料理で、この日は鱧とおかひじきが使われました。初夏に美味しい鱧は、少し炙って香ばしさをプラス。おかひじきは、外側に揚げたものを使い、内側は鱧の卵と和えていて、味と食感の違いが伝わります。上から梅が振りかかり、酢橘も搾って、さっぱりといただきました。
▲「先附 緑山水」は、鱧とおかひじきの共演を酸味でさっぱり
「椀物」は蓋を開けた瞬間、鰹と昆布のいい香りが立ち込めます。淡白で脂ののったハタの切り身や、シャキシャキと歯ごたえのある白ずいき、ツルリとのど越しがいいジュンサイなど、食感と味が異なる素材感。特に出汁の風味がよく出るように、佐久市にある橘倉酒造から頂いた日本酒の仕込み水を使うなど、こだわりの味を感じ取ってみてください。
▲出汁の風味が余韻を残す「椀物 白羽」
竹筒には川魚がのっています。信州で親しまれている鯉は、刺身と巻き寿司が用意され、歯ごたえのあるさっぱりとした味でした。うちわをかたどった器は海の魚で、マグロとメイチダイのお造りが並びます。さらに桂の葉の下に雲丹が隠れていて、造り醤油と酢橘を絞ったポン酢でいただきました。
▲「向附 彩山野海魚」は川と海で獲れたお造り
驚きの料理は「勧進帳 山渓」と名付けられた “変わり鍋” でいただくしゃぶしゃぶです。長野の夏をイメージした鍋は、緑豊かなマイクロハーブの山々と、出汁を泡立てた夏雲です。野菜もたっぷりくわわり、洋風な味付けの出汁の味がとても美味しかったです。
▲変わり鍋「強肴 勧進帳 山渓」。マイクロハーブの山と、出汁を泡立てた夏の雲
出汁にはトマトや隠し味の赤ワインが加わり、コンソメを思わせる味わい。角切りの生姜もあしらわれ、さっぱりとしたアクセントになっています。しゃぶしゃぶした牛肉に、辛子味噌をつけると味の変化も楽しめます。
▲鍋に火が通ると雲が晴れて食べごろに。お肉がとっても柔らかでした
初めに供されることが多い「八寸」は、コース料理のほぼ真ん中で登場。そのうえ牛肉料理の直後に運ばれるため、第二章が始まったように感じられる構成でした。ケシの実を散らして焼いた鹿肉の松風や、川海老、フルーツ鬼灯(ほおずき)、トウモロコシのお豆腐はひげも使って丸ごと楽しめるなど、目にも鮮やか、味も多彩なひと口料理が並びます。
▲目にも楽しい「八寸 夏逢の粋」
八寸にあった「鮑隠元胡麻肝和え」は、鮑とインゲンをたっぷりの白ごまで和えた一品。酢でさっぱりと仕上げられています。
▲八寸のひとつ「鮑隠元胡麻肝和え」
メインディッシュは、肉料理と魚料理のどちらかを選びます。「牛の炭火焼」は、大皿に飾られた緑豊かな笹の葉に驚かされました。牛肉の炭火焼きは、カツオと昆布で味をつけた味噌だまりにつけていただきます。牛肉はとっても柔らかく、肉汁が口の中に広がる感動の味でした。
▲緑豊かな「牛の炭火焼」
メイン料理の後のいわば口直しは、4種類のウリを使った冷やし鉢「東西南朴」。冬瓜(トウガン)と西瓜(スイカ)、南瓜(カボチャ)、ズッキーニが使われ、ジュレ状のスイカを冬瓜にトッピング。カボチャのすり流しを敷いていて、ズッキーニが添えられます。瓜科の野菜を意識して食べくらべるのも初めての試みで、それぞれ個性のちがうウリの味をしっかり感じられる一皿でした。
▲4種類のウリを楽しむ「冷鉢 東西南朴」
『万葉集』には大伴家持による、夏痩せには武奈伎(むなぎ)、つまりウナギがよいとの歌があります。夏のご飯はひつまぶしで、骨や醤油で煮詰めたタレを塗って焼き上げたウナギに煮山椒をトッピング。うなぎの下にはミョウガを忍ばせています。素材の味が楽しめるよう薄目の味つけになっていて、香ばしい焼き上がりの味を満喫しました。
▲土鍋で運ばれる「むなぎ(ウナギ)」のひつまぶし
ひつまぶしに出汁を注ぎ、わさびの葉を味噌と合えた “わさび味噌” と共にいただきます。出汁の風味が加わって、味が一変。土鍋ならではのおこげの香ばしさも、さらに食欲をかき立てます。料理もすでに終盤でお腹も一杯になりかけていましたが、それでも箸が止まらない美味しさでした。
▲ひつまぶしのお茶漬け
果物は長方形に切られたスイカと丸いブドウに、楓の葉が添えられます。シンプルですが、おやっと思える美しさ。いつも刺激を与えてくれるメニューです。
▲とっても甘い旬の果物、スイカとブドウ
りんごの産地としても有名な長野県。吟醸酒で作ったアイスクリームに、りんごのお酒シードルをかける驚きのデザートが、料理の締めくくりを飾ります。長野県飯綱町の廃校(旧三水第二小学校)を利用した「林檎学校醸造所」のクラフトシードルが注がれます。
▲デザートの「甘味 吟白水」
発泡性のシードルは、アイスクリームと反応して泡がはじけるライブ感。吟醸酒のアイスクリームに清涼感いっぱいのシードルの味と刺激が加わります。軽井沢周辺でも栽培される花豆の甘露煮がアクセント。ディナーを締めくくる楽しく美味しいデザートでした。
▲泡がはぜて、爽やかなリンゴ酒の香りが広がります
日本料理 嘉助でいただいた「山の懐石」。その名のとおり、山に囲まれた長野県の山の幸を中心に、涼と滋養を気遣いながら、創造性豊かな料理です。時には驚き、時には好奇心を刺激されながら、美味しくいただく夏のメニューでした。
|「山の朝食」
「日本料理 嘉助」でいただく「山の朝食」は、焼き魚や出汁巻き卵、夏野菜の胡麻和えのほか、昔は保存食として人々の健康を維持した郷土料理 “寒干し大根” の田舎煮など、和食を中心にしたおかずが並びます。
特に心して味わっておきたいのが、野菜の皮や茎などを丸ごと使った出汁の味。鰹や昆布の出汁とは違う優しい風味は初体験。出汁と素材の美味しさを確かめながら、食べておきたい朝食です。
▲「山の朝食」
朝のメイン料理は食材にフタをして蒸し上げる「焙烙蒸し(ほうろくむし)」。アスパラガスや人参が、ドーム状になったレタスの下に隠れていて、湯気になって立ち昇る野菜の香りで優しい気分になりました。畑から野菜を収穫するように、手でつまみ上げて食べるのがおすすめ。塩をつけてさっぱりいただいたり、香ばしい焼き味噌をつけたりと、濃い野菜の味を引き立ててくれました。
▲朝にピッタリ、ホカホカ野菜の「焙烙蒸し(ほうろくむし)」
▲この日の焼き魚は、炭火で焼きあげた肉厚の鮭。ご飯が進みました
しかり味わっておきたいのが出汁巻き玉子です。野菜の出汁だけで味付けをしていて、野菜の複雑な風味とコクが最も感じられた一品です。鰹や昆布出汁にくらべ、優しく軽やかな味でした。
▲野菜出汁の「出汁巻き玉子」
ご飯は白米かそば茶粥から選びます。小鉢に盛られたご飯のお供もいい味で、この日は「じゃこ山椒」や「塩昆布」、サッパリとしたお漬物と、長野県を代表する「野沢菜漬」が並びました。
▲ご飯のお供4種
「じゃこ山椒」は日本料理 嘉助が開業当時から評判の品。個人的には山椒が苦手なのですが、こちらは山椒の実のとても爽やか風味が広がって、とても美味しくいただきました。
▲ご飯には「じゃこ山椒」をトッピング
こちらも野菜出汁を使ったお味噌汁。粟を練り込んだモチモチの生麩と茄子も加わる一杯です。
▲野菜出汁でいただく「粟麩のお味噌汁」
▲デザートは「熊笹あんみつ」
星のや軽井沢の日本料理 嘉助でいただく「山の懐石」は、信州らしい野菜や肉を中心に、クリエイティブで驚きのある料理をいただけます。そして朝食はまさに “日本の朝” と呼ぶにふさわしい野菜や味噌、お漬物など、素材の美味しさをしっかりと味わえるメニューです。特に野菜の出汁の優しい風味も心に残る味わいです。夜と朝、ひと品ひと品、心を込めて味わってみてくださいね。<text&photo:湯川カオル子 予約・問:星のや軽井沢 https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyakaruizawa/>
2024/08/24| TAGS: lifestyle
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