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伊達政宗が興した仙台の味。星野リゾートの温泉旅館【界 秋保】で楽しむ自然と歴史のマリアージュ

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旅先で最大の楽しみのひとつは、地の物を使ったディナーと朝食です。2024年4月に開業した星野リゾートの温泉旅館【界 秋保】では、創意工夫を凝らした宮城県の海の幸と山の幸を楽しめるほか、さり気なく、伊達政宗へのオマージュを織り交ぜたメニューも見どころであり、食べどころ。自然と歴史のマリアージュを、ぜひ味わってみてください。

 

|宮城の味「新伊達会席」

 

夕食は界 秋保の特別会席をいただきます。豊かな海の幸を中心に、牛タンや牛テールなど、仙台らしい料理や食材を用意。出汁や味付けのよさはもちろん、仙台発展の礎を築いた伊達政宗にちなむ創作料理や器が冴える「新伊達会席」をいただきました。

 

▲夕食と朝食はお食事処で

 

朝夕の食事会場の入口はとてもシンプルで、天井からの間接照明が印象的。受付のスタッフがいるカウンターは、米どころの宮城県をイメージする米俵のデザインです。

 

▲お食事処は半個室のように仕切られた落ち着いた雰囲気です

 

ドリンクもそろいます。今回試したのは、宮城県の酒蔵3種の地酒が楽しめる人気メニュー。新澤酒造店の「伯楽星 純米大吟醸」と、「浦霞 純米吟醸No.12」、そして荻野酒造の「日和田 生酛(きもと)純米」の3種。食事が進むとともにそれぞれの味わいの違いや個性を味わうことができました。

 

▲宮城県の名酒がそろう「地酒の飲み比べ」¥2,300

 

先付けの器は、紺地に赤・青・緑・黄・白の星を表す円形模様が鮮やかな伊達家に伝わる陣羽織がモチーフ。味噌壷の中には、「仙台味噌」に、仙台名物牛タンのお店ではポピュラーな牛テールを合わせたリエットが入っています。伊達政宗の指示で城下に味噌蔵を建てるなど、「仙台味噌」は日用食や軍糧としても重要な食材でした。

 

▲先付け「牛テールのリエット」

 

油で揚げた「仙台麩(油麩)」は、カリッとしていて、固焼きパンを思わせる食感。牛テールのリエットの複雑で深い味わいから、ディナーのスタートを切りました。

 

▲仙台麩にトッピングした牛テールのリエット

 

煮物椀は「鴨敷石寄せ」です。鴨肉の上に蕪とお餅を合わせて敷石に見立てたます。三つ葉に散る振り柚子の香りがふわりと広がり、奥行きのある出汁の風味が口の中に広がります。

 

▲香りと味を楽しむ煮物椀「鴨敷石寄せ」

 

大名膳を思わせる高座のお膳で提供される「宝楽盛り」は、鯛の棒寿司やお造り、酢の物などが並びます。この日のお造りは、口の中でとろける脂ののった本マグロや、柔らかで甘味のあるホタテ、季節物のブリやサーモンを、地元の吟醸醤油でいただきました。

 

▲「宝楽盛り」で大名気分

 

どれも一口で食べられる「八寸」は、鯛の棒寿司や蟹と菊花の砧巻き、エビの芝煮 つぶ貝の柔らか煮が盛られ、味のちがいを楽しめました。

 

▲きらびやかな金色のお皿に盛られた「八寸」

 

酢の物は、北寄貝とワカメに土佐酢のジュレをからめ、柔らかな酸味がアクセント。

 

▲「北寄貝と若芽 土佐酢和え」

 

乾燥した湯葉を砕き、あおさを加えた衣で揚げた車海老の東寺揚げ。パリパリで香ばしく、優しい塩味がついているので、そのままでも美味しくいいただけます。

 

▲軽やかな歯ごたえ「車海老の東寺揚げ」

 

メインとなる料理「牛の山海俵鍋(さんかいたわらなべ)」。霜降りの牛ロースのほか、魚醤の「雲丹醤(うにひしお)」を包んだ牛ロースが並びます。宮城県では冬の鍋料理によく使われる芹の根も添えられ、鶏がらと香味野菜の出汁でいただきます。

 

▲小鍋「牛の山海俵鍋」

 

牛肉と雲丹を組み合わせは最強のツートップ。しかもトリュフを浮かべた出汁に牛ロースをくぐらせ、雲丹を巻いていただく贅沢な逸品です。

 

▲牛肉の旨味と雲丹の甘さ、トリュフの香りとがベストマッチ

 

仙台名物の牛タンは、麦ご飯で食べる習慣があることから、もち麦ご飯は土鍋炊き。「牛タンの柔らか煮」や「牛テールスープ」と共に、〆のご飯をいただきます。

 

▲土鍋には三日月の前立てを備えた伊達政宗の兜が描かれています

 

まったりと濃厚で柔らかな「牛タンの柔らか煮」に、旨味がにじみ出た塩味ベースの「牛テールスープ」がサイドメニュー。牛タンをご飯にかけていただくのも一手です。

 

▲もち麦の土鍋ご飯と〆の膳

 

デザートは「ずんだと蔵王ヨーグルトの松島仕立て」。ずんだと豆乳を合わせたソースを海に見立て、蔵王ヨーグルトを沈めて松島に浮かぶ島々をイメージ。松島の瑞巌寺では、伊達政宗が朝鮮出兵から持ち帰ったと伝わる紅梅と白梅が龍のふせた姿に見えることから、赤と白のイチゴを浮かべ、梅ジャムを添えています。

 

▲“日本三景” のひとつ、松島に見立てたヨーグルト

 

|朝ごはんも仙台の味

 

朝食の和食膳も、夕食と同じ食事処の個室でゆったりと食べられます。優しくお腹を満たしたい朝食だからこそ、少しずつ様々な味をそろえます。三角揚げや芋の子汁、吟醸豆腐など、仙台やその周辺の料理が用意され、一品ごとに心して味わっておきたい品ぞろえです

 

▲朝ごはん

 

仙台市街の北西にある「定義如来西方寺(通称は定義山)」は縁結びの聖地として知られます。そんな参拝客の目的のひとつが、定義如来にあやかった三角定規の形をした油揚げ。両面をこんがりと焼き上げられ、醤油をたらしていただきます。大きなお揚げは外がサクサク、中はふんわりの食感です。

 

▲仙台グルメの「三角揚げ」

 

里芋を鍋で煮込んだ芋煮風の郷土料理「芋の子汁」は、伊達政宗が合戦に臨んだ際「天下を獲ったら芋の子汁を心ゆくまで食べたいものだ」と言ったと伝わります。朝食では仙台味噌と里芋、豚肉を使い、にんじんやごぼうなどの野菜もたっぷり入る、朝にほっこりとする味でした。

 

▲伊達政宗の好物と伝わる「芋の子汁」

 

▲「玉子焼き」、「いくらの醤油漬け」、「鶏つくね 銀餡」、本日の焼き魚「鮭の塩焼き」

 

お豆腐は、厳選した大豆を “吟醸” の言葉に込めた太田とうふ店の「吟醸豆腐」。大豆の旨味たっぷりでクリーミーな味わいです。

 

▲「吟醸豆腐」

 

太田とうふ店のお豆腐によく合う山形県天童市のマルセン醤油。出汁が効いて、なんにでも合うお醤油でした。このほか薬味とし、オリーブオイルやかつおぶし、海藻から作った塩釜の藻塩を用意します。

 

▲カツオ出汁の効いた「味の大名醤油」

 

朝食のアクセントとして楽しめるご飯のお供は、4種類。牛しぐれ、糖しぼり大根、昆布梅、ひじきの煮物が盛られます。

 

▲ご飯のお供

 

▲デザートは爽やかな梅の風味が口いっぱいに広がる「梅ゼリー」

 

その土地の風土や文化、歴史が創り上げる味と料理。星野リゾートの温泉旅館【界 秋保】では、豊かな海と肥沃な大地が生み出す食材を用意。伊達政宗が仙台の町を開いて400年の時に磨かれた味を、心行くまで味わってみてくださいね。<text&photo:湯川カオル子 予約・問:星野リゾート 界 秋保 https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiakiu/


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